SKY CAPTAIN and the World of Tomorrow

いい夢みさしてもらいました。



(思いのたけをこめたながーいレビューです。ネタバレいっぱいです。)


去年男二人で劇場に観に行って「燃え燃え」した映画です。
久しぶりにDVDで再鑑賞しました。


まずね。
タイトルが泣かせるじゃないですか。


「the World of Tomorrow」


邦題「来るべき世界」


30年前の「少年画報」とかの巻頭カラーイラストとかにありそうだよね。
「りにあもーたーかー」とか「げんしりょくひこうき」とか「そらとぶじどうしゃ」とか「ろぼっとのおともだち」みたいな。天真爛漫に科学未来世界を夢見れた時代。いまじゃ全くといっていいほどこんな未来観は語ることはできません。


ところがこの映画、イマドキそんなステキな未来を魅力的に描き出しています。
といっても舞台は未来じゃなくて第二次大戦前夜、あるいは第二次大戦がなかったら。こういう戦間期的設定、ツボです。


当然世界はアールデコ一色。流線型マンセー


まず冒頭ね。


飛行船ヒンデンブルグ3世号がエンパイアステートビルに係留されるシーン。
ヒンデンブルグはレイクハーストで爆発炎上して以来、後継機はつくられていないのです。なのに「3世号」。胸キュンです。


しかもエンパイアステートにドッキングですよ?エンパイアステートの最上部は確かに飛行船ドックとして設計された経緯がありますが、実際は風が強すぎて使用されなかったらしい、あたりまえだけど。だけど飛行船マニアは「実際にドッキングベイ使ってたらなぁ…」と夢見るわけです。(宮崎駿もテディス要塞にゴリアテドッキングさせて夢かなえてるし)それをフルCGで再現してしまったこの映画。漢です。


次に、マンハッタン上空に巨大ロボット群飛来!
これをみて「ルパン三世のラムダのパクリじゃん」とつっこむ人がいますが。


ラムダのがパクリです。


むかしむかしのフライシャーのスーパーマンにそっくりのロボットがでてきます。てかルパン3世でラムダが原作どおり宝石泥棒してたり、銭形のとっつぁんが「ありゃーまるでスーパーマンですなぁ」てな台詞をはいているあたり、宮崎駿によるオマージュと考えるべきでしょう。


当然この映画の巨大ロボットもスーパーマンへのオマージュ。それもフルCGでロボット群にマンハッタンの空をおおわせてしまう壮大なオマージュなのであります。


他にも泣かせる小物がたくさん。
スカイキャプテンの愛機はカーチスP-40ウォーホーク改、ワイヤーは吐くわ海に潜れるわのボンドカーも真っ青の「改」っぷりです。


さりげなーくマンハッタンの街中の高架を走っているのはローウィーがデザインしたペンシルバニア鉄道GG1電気機関車、流線型時代の寵児。ステキすぎる。


アンジェリーナ・ジョリーが艦長さんやってる空中空母。(なんじゃそら)英国海軍所属、でかでかとマークされたイギリス国旗がポイント高いです。アメリカ軍ださないあたりこだわりを感じます。


スカイキャプテンの基地を襲う飛行ロボットの原型は、おそらくナチスドイツ下に開発されたHorten全翼機じゃないかな?かっけー。


ここまで監督さんの好きなモノがオモチャ箱みたいに登場するんだけど、最後に登場するロケットを見て、この映画の世界観が一挙に集約された気がしました。最上部に安置されたアルミ外装の神像とかね。


この映画、俳優はほとんどグリーンスクリーン上の演技だけで、他は全部CGだそうで。低予算のためもあるのでしょう、FFみたいにCGを作りこむことはせず、逆にCGの安っぽさをレトロ感にうまく変えて面白い効果をつくりだしています。


これが行き過ぎて、無線アンテナからわっかが広がったりとか、地図の上を飛行機が飛んでったりとか、アニメみたいな表現がいっぱいでてきて面白いです。


まったくもって夢物語の世界です。が、第二次大戦を通して科学技術が洗練され進歩していった過程で失ってしまったファンタジー性をこれでもか!ってぐらいに見せつけられて、郷愁?めいたものをひしひしと感じた映画でした。


今回初めて発見したんだけど。
「世界の主要都市、巨大ロボットに襲わる!」てなぐあいに世界各国の新聞が報じるシーンがあるんですが…。
日本の新聞には「巨人機兵、日本を襲う」「大怪獣、日本国民を救う」との記事。
写真には五重の塔をバックに巨大ロボットとたたかうゴジラのシルエットが…(笑)