救急車に乗る。あるいは本厄への序章。後編
うなだれて病院を出ると声をかけられました。
「君、さっきの自転車の人だよね?」
よく見てみたらさっきの白い車のドライバーさんじゃないですか。
あらまー。
でもこのひと、なんで僕がこの病院にいるってこと知ってるんだろう?
不思議に思いながら、このままじゃどうしようもないしとりあえず2人連れ立ってさっきの交番に行きました。
そいで調書開始。
「じゃドライバーの方のお名前とご職業は?」
「○○です。この自転車の人が運び込まれた病院のドクターをしています」
「…は?」
その場にいた人、みんな顔を見合わせる…。
つまり。
ドライバーさんは事故のあと、そのまま車にのって勤務先の病院に行ったと。そこに救急車が到着して、さっき隣でオオゴケした自転車の男が運び込まれてきた。「なんか大変なことになってるみたい…」と心配し、病院から出てきた僕を捕まえたと。
「不思議な話だねぇ〜」
調書をとってるおまわりさん、あきらかに面白がってます。
「まぁとりあえず実況検分しないとね」
署から鑑識さん乗っけたバンが到着。現場再現をします。
寒空の下、震えながらじーっと検分を見守ります。近所のおじさん、おばさんたちの遠慮ない視線にさらされます。近くのケーキ屋さんからは今更ながらの能天気な音楽。
「じんぐるべー、じんぐるべー」
…もうどーでもいーや。
スコープ使って車についた塗料片まで調べていた鑑識さん、結局なんで自転車がひっくりかえったのか原因が分からず(僕も分からず)曰く
「なんかもう当事者同士の話し合いでいいんじゃないですか?」
(最初っから僕そう言ってたじゃん!)
鶴の一声でこの騒ぎはおさまりました。
僕の診察代はドライバーさんがだしてくれることに。
「僕の勤務先だしさ」
うーん、いいひとでよかった。
なんていうか、おさわがせさまでした、というしかないクリスマスの朝でした。
メリークリスマス。